30台の弁護士の日記です。会社勤めをした後,法科大学院を経由して,なんとか弁護士になりました。チラシの裏(=ごく私的な備忘用)なので,有益な記事はありませんのであしからず。


by VNTR

2005年 04月 20日 ( 1 )

王妃の離婚

今日の1冊……って、ずいぶん久々ですが。

まったく小説やエッセイを読んでないわけではないのですけど、やっぱり大幅に読む量が減ってます。小説読むより、基本書読め、という状況なものですから。

佐藤賢一 『王妃の離婚』 集英社文庫 121回直木賞受賞作
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フランス国王ルイ12世と、その王妃ジャンヌの離婚訴訟を舞台にした小説です。

主人公フランソワは、若かりし時にパリ大学の俊英として広く将来を期待された過去をもちますが、いまはしがない田舎の中年弁護士。わずかに同業者の間で凄腕として知られるだけの生活を送っています。その彼が、片時も忘れたことのないパリ大学時代の同棲相手(すでに死去)の縁で、フランス中が注目する国王と王妃の離婚訴訟における王妃側弁護人を勤めることに。圧倒的に不利な状況に追い詰められている王妃を、彼は勝利に導くことができるのか? 国王側の陰湿な妨害工作を跳ね除けることができるのか? という感じのストーリーです。

訴訟といっても、当時のことですから「受洗者の婚姻訴訟に関しては、教会の裁判権が固有の権利を有する」と条文に明記された、キリスト教カノン法による裁判です。教会の裁判といえば、異端審問などを連想しがちですが、実は教会は中世ヨーロッパにおける家庭裁判所の役割を果たしていたのです。弁護士であるフランソワも、身分は僧侶、ナント司教座法廷常設弁護人という教会役人です。

佐藤賢一の小説は、デビュー作『ジャガーになった男』のほか、本作と似た雰囲気の『カルチェ・ラタン』、すばらしい傑作『カエサルを撃て』、『剣闘士スパルタクス』など、いくつも読んでいます。どれを読んでもみごとな作品ばかりです。

今回の『王妃の離婚』も手に汗にぎるすばらしい作品でした。お時間がありましたら、ぜひ読んでみてください。
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by VNTR | 2005-04-20 13:07