30台の弁護士の日記です。会社勤めをした後,法科大学院を経由して,なんとか弁護士になりました。チラシの裏(=ごく私的な備忘用)なので,有益な記事はありませんのであしからず。


by VNTR
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最判平成19年11月8日(続き)

↓のエントリの続きです。

考慮要素は似ているのですが,一審と結論が逆になったのは「加工の態様」の評価の相違が原因だと考えられます。

決定的なのは,一審が

「毛管力が高い界面部分の構造は,インクを使い切った後もそのまま残存している」

として,特許発明(輸送中のインク漏れ防止)の本質的な部分が変更されていないと判断しているのに対し,

最判は,

「インクがある程度費消されると,圧接部の界面の一部又は全部がインクを保持しなくなるものであり」

として,特許発明の本質的部分に係る構成を欠く状態に至ると認定したうえで,インクタンク本体の内部を洗浄してからインクを再充填することによって,

「本件発明の実質的な価値を再び再現し,開封前のインク漏れ防止という本件発明の作用効果を新たに発揮させるものと評せざるをえない」

と認定していることでしょう。

もっとも,この最判の認定自体は,控訴審の知財高裁大合議判決の認定と同様ですから,最判が控訴審の認定を踏まえて,このように判断したことは当然だと思います。

控訴審はこの認定をもって,特許発明の本質的部分を構成する部材の一部についての加工又は交換に該当するから,特許権が消尽しないと認定したのであり(控訴審がいうところの消尽しない類型のうち第2類型)

一方,本件最判はこの認定をもって,「加工前の被上告人製品と同一性を欠く特許製品が新たに製造された」と認めています。

最判が一審が用いた「新たな生産」という表現を避けて,「新たに製造」という表現をとっているのは,控訴審判決が一審の「生産アプローチ」に対して

『生産』の語を特許法2条3項1号にいう『生産』と異なる意味で用いるものであって,生産の概念を混乱させるおそれがある

という指摘をしていたことに対応するものだと思われます。「生産アプローチ」ではなく,「製造アプローチ」だということでしょうか。

(まだ続きます)
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by VNTR | 2007-11-08 21:47 | 法科大学院関連